半島を出よ 村上龍

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2005年3月に刊行されていた「半島を出よ」を2006年初から読み始めてようやく読了。
上下巻合わせて400字詰め原稿用紙1,650枚の長編。

北朝鮮の人々の心情や意識や行動について、数多くの文献や脱北者の取材を元に細やかに描かれていて、
小説とはいえとても勇気ある刊行だなと思った。

福岡市を舞台とした話で、装丁に衛星写真が使われているのだけど、
装丁を見ながらじゃ読みにくいのでgoogle earthyahoo! mapsを参照しながら位置関係をつかむ。



目次の後に続く登場人物は100人以上、眩暈するほど多い。
章ごとにそのうちの何人かが語り手(一人称)として話は進むのだけど、やはり数が多くなかなか感情移入できない。
後半の戦闘場面で人がバッタバッタ死ぬのだけど、感情移入できてないせいで、淡々と読み進むしかない。

下巻巻末にある参考文献は北朝鮮、住基ネット、国際法、少年兵、特殊部隊、火薬、建築設備、医学、九州経済などなど
莫大な数を記し、それらを読み解きディテールを構築したらしいのだけど、そうやってディテールに拘ってますよと感じるだけに、
鉄骨鉄筋コンクリートについて「鉄骨筋コンクリート」という表記や、S造、SRC造、RC造、HRC造の解釈の曖昧さがなんとなく気になった。
第7刷では直されていたけど、「愛知県四日市市」という表記もあったらしい。

しかし、
この登場人物の多さや、何人もが一人称になって進む話や、注釈の無い専門用語の羅列には
読み手に対してハードルを上げるという挑戦的な意図を感じるし、
そのあたりが万人受けしない所以なのだろうけど読み応えを感じたりもする。

経済や人の暮らしぶりについて格差を伴った多様化が進んでいるとか、
新聞・TVといった既存メディアが質問にならない質問しかしないところとか、
政府閣僚が保身優先の言動に終始し、問題の核心について追究せずに大枠から見れば明らかに優先順位の低い事柄についてアクセク奔走する様や、
そういった外堀の学問や仕事において非常に努力するが、自分よりも上位の他人への過剰な気遣いがあり、そのカタルシスとして弱い者にむやみに威張るという日本企業によくいる50歳台の典型とか、
そういういつも変わらずの描写にいつものカタルシスを感じたりもする。

「昭和歌謡大全集」の続編的シチュエーションに、「愛と幻想のファシズム」、「5分後の世界」のテイストがあり、
それらを読了した頃にはドーンとした脱力感とその後ふつふつと込上げる元気を感じたのだが
今回そういった感覚をそれほど感じなかったのは、僕自身が歳をとってしまったせいなのかな、と反省した。
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